経験と年齢は比例しない
コンビニに行った時の話だ。
僕はレッドブルを片手に、レジの待機列に並んでいた。前には一人しかいないので、次には僕の順番になる。レジは三台置いてあり、それぞれに三人の店員がいて、対応している。
「次の方、どうぞー」
野太い声とともに、一番右のレジが開いた。中年男性の店員さんの声に、僕の前の人が反応して、そちらへと向かう。と思ったら、中央付近のレジ前においてある惣菜のテーブルへ向かった。その時ちょうど、中央付近のレジが開いて、
「次のお客様、どうぞー」
と、若い女性店員が声を上げる。彼女の視線は僕の前の客へと向かっており、おそらくはその人に向けて発せられた言葉なのだと思う。
僕の前にいたお客は中央のテーブル付近にいて、右端のレジよりも近い。だから彼女は、その客はこちらに来ると判断したのだと思う。僕も、たぶんその人は中央のレジに行くだろうと考えて、右端のレジへと向かった。
会計をしてもらおうとレッドブルを男性に差し出すと、
「・・・、次のお客様ですよ?」
と疑問の声をかけられた。
「私の番なんですけど!」
惣菜を選び終わった人からもこちらを諫める声が上がる。どうやら近い中央のレジでなくて、わざわざ遠い右端のレジに移動してきたらしい。
「はぁ。」
気の抜けた声と共に軽い会釈をすると、中央のレジの方が近いのになぁ、と思いながら、中央のレジに向かう。
見ると、中央レジの女性店員も隣の二人を眺めながら首をかしげていた。
「なんなんですかねぇ?」
思わずそんな言葉が口に出た。彼女はその言葉を聞くとこちらを向くと、
「なんなんですかねぇ?」
と苦笑した。
会計を済ませてレジを離れようとすると、
「ゴールデンバット、それ、ああ、違う、それじゃない、それじゃない!」
と、男性店員とその客が揉めているの様子が目の端に移った。
女性店員はため息をこぼしながら男性店員のフォローに向かう。僕は、最初から逆にしとけば無駄もないし問題も起こらなかっただろうになぁ、と思いながら、レジを離れてコンビニの入り口に向かう。
去り際に彼らの胸元を見ると、女性はサブリーダーで、男性はトレーニング中であることが分かった。なるほど、これが経験の差というやつか。
やはりというか、経験と年齢は比例しないことがわかる一件だと思った。