山を登ると気が晴れた
8月10日のことだ。
明日が山の日だということを知って、突如、山へ行こうと思い立った。目的ができるし、終えれば体力も尽くだろうし、一石二鳥だ。何か得るものがあれば、三鳥もなる。
探してみると、宮島の弥山が初心者向けなうえ、観光も出来てよさげに思った。標高は500メートル前後で片道三時間程。有名どころでロープウェイもある。万が一にも山で野垂れ死にすることはないなと思い、熊野古道用の登山装備を用意して早速出かけた。
次の日の朝、広島から電車とフェリーで45分ほど揺られ、宮島へ到着する。元々有名な観光地であることもさながら、三連休の初日であり、山の日であることも重なってだろう、人の数がすごい。
港に降り立つと、厳島神社をさっと通り抜けて宮島水族館の方へ。水族館の先にある大元公園から山に入り、大元ルートを通って弥山の頂上を目指す。
今回選んだ登山ルートは、3つある中で最も距離があり険しいルートだ。人の姿が全くみえない。樹木は好き勝手に伸び、クモがあちこちに巣が張り、地面には雑草や折れた木の枝、葉っぱやシカの糞などが転がっている。遊歩道でない部分はもっとひどい。
手入れがされていないのは、登山道も一緒だ。踏みしめる人がいないためだろう。地面は柔らかく、緑色の苔が絨毯のように薄く生えていた。道は傾斜が急でグネグネと曲がった道。真夏の気温と嶮しい道は思った以上に体力を奪う。正直なところ、登って15分もしないうちに既に帰りたいという気分になっていた。
そんな精神状態でも、登り切ることができたのは、外国からきた男女と出会った事が大きい。彼らは人懐っこく、挨拶をするとすぐに会話に発展した。一組とは何度もすれ違い励ましあった。別の一組からは、水を頂くこともあった。ありがたいことだ。
山頂に上った後は、見晴らし台の休憩場所で30分程横になった。山頂は湿気が薄く、日陰となっているそこは、とても涼しい。濡れ雑巾になった上着とつづげて溢れる汗が木目の床を驚くほど湿らせ、寝そべった場所は水をぶちまけたような跡ができた。申し訳ないと思ったが、拭えるものがなかったので、そのままにして下山した。
山を下りて帰路に着いた時、とても気分がよかった。久しぶりだ。知らないと気楽に会話した事と、山に登ったという達成感が良かったのだろう。当初の目的通りではないが、一石二鳥の成果は得ることが出来た。自然の中を動き回るのはいい。
次は、自転車で海を渡ろうと思う。楽しみだ。
ご覧戴き、ありがとうございました。